合成生物学は、新興分野で学際的な分野ですので、全く別の分野から参入というキャリアの人材が多い分野です。一般論として、科学研究やイノベーションにおいて、そういうπ型(パイ型)人材の存在が極めて重要になってくるわけです。 例えば、大学から大学院、大学院からポスドクといったキャリアの選択において、分野の切り換えを行うことが積極的に評価されなければいけません。日本において、合成生物学のような学際的な分野が盛んになりにくいのは、このようなπ型人材が生きにくい場所になっていることに大きな要因があると言っても過言ではないと思います。 新しいNature誌に、「研究分野をうまく切り替えるには(How to switch research fields successfully)」という文章がでています。 まず、こういうπ型人材が本当に重要なのか、ということをこの論文を引用して説明しています。 Sun, Y. et al. (2021) Interdisciplinary researchers attain better long-term funding performance. Commun Phys 4, 263. https://doi.org/10.1038/s42005-021-00769-z 学際的な研究は世界的に増加しています。 しかし、いくつかの研究では、より専門的な研究に比べて効果が低いことが多く、資金を集める可能性が低いことが示されています。 ここでは、英国の研究評議会から授与された 44,419 件の研究助成金を分析することにより、そのような証拠を照合しようとします。 学際的な資金提供の実績を持つ研究者は、中心性と知識仲介の両方の点で学術共同研究のネットワークを支配しているが、そのような競争上の優位性がすぐに利益につながるわけではないことがわかりました。 マッチドペア分析に基づく我々の結果は、学際的な研究者が短期的には自分の出版物で達成する影響力が低いことを示しています。 しかし、最終的には資金調達パフォーマンスにおいて、量と金額の両方の点で専門に特化した相手を上回ります。 これらの調査結果は、学際的なキャリアを追求するには余分な課題を克服する忍耐力が必要かもしれないが、より成功する努力への道を切り開くことができることを示唆しています。 分野を変えるとどのような不利な点や問題があるのでしょうか。